
シバサキ製作所の現地子会社シバサキTBタイランドは、自動車関連製品の製造業として大きく事業を伸ばしていました。そのような中で、将来的な設備増強が必要だといち早く察知したのは、タイのカシコン銀行に派遣されていたT.Iさん。国内でシバサキ製作所を担当するR.Fさんと連携し、他行に先駆けて国際協力銀行に働きかけ、タイバーツ建て協調融資を実現しました。タイトなスケジュールで資金調達できた要因や反響について、話を伺いました。
プロジェクトの背景・課題・目的
何でも相談できる関係性。それが、競合に勝てた要因だった。
― まずは、プロジェクトの概要を教えてください。
T.I:
武蔵野銀行は、海外に進出する県内の企業を支援しています。その一つが、シバサキ製作所のタイ現地法人であるシバサキTBタイランドでした。当時、タイのカシコン銀行に出向していた私と寄居支店のR.Fさん、海外進出支援室が連携し、タイバーツ建て融資スキームを実行しました。
R.F:
シバサキ製作所は寄居エリアの中でもトップクラスの規模を誇る企業で、海外進出や事業拡大などを積極的に行っていました。取引銀行も多く、ライバル行も融資の提案をしていましたが、低金利で競争力の高い提案を実施したことで当行を選んでいただけました。
T.I:
ライバル行に競り勝てたのは、日頃からタイ現地法人と密にコミュニケーションを取っていたことが大きかったと思います。海外拠点は人員や情報が限られており、様々なお困りごとを抱えているケースが多いです。頼れるパートナーとして、損得抜きの関係を築く。それがお客さまのためになると信じて、税制度の情報提供やビジネスマッチングなど、銀行業務を超えた支援を行ってきました。
― どのようにして競争力の高い提案を実現したのでしょうか?
T.I:
何かあれば私宛に連絡いただける関係を築いた結果、ある時「商社業務のライセンスを申請したい」という相談を受けました。そして、工場に何度も足を運ぶうちに、同社製品に対する取引先からの評価の高さから、工場がフル稼働していることに気づいたのです。きっと生産ラインを拡張することになる。そう判断し、水面下で早急に準備を開始。これまで取り扱いのなかった融資をスムーズに行えるよう、R.Fさんと連携してスキームを構築しました。ついに約1年半後、新しい機械設備の導入のための資金調達の相談を受けました。
R.F:
国をまたぐスキームのため、通常よりも審査や手続きに時間を要することが課題でした。さらに、お客さまが希望される実行日までのスケジュールは非常にタイト。時差がある中で国際電話やメールで綿密に連絡を取り合い、案件の進捗を共有し、融資審査に必要な情報をスピーディに連携し合いました。

実現ストーリー
限られた時間で鍵となったのは、綿密な事前準備。
― スキームを構築する上で大変だったことはありますか?
T.I:
当プロジェクトは、政府系金融機関の国際協力銀行(以下 JBIC)への保証差入れにより、融資総額の70%をタイバーツ建てで実行するスキームを採用しました。当行としてJBICと組むのは2例目でしたが、オーダーメイド性が強い案件だったため、初めての挑戦と言っても過言ではない状況。融資実行にあたりJBICとの情報連携が必要で、時間を要することが見込まれていたのですが、事前にお客さまから事業計画など様々な事柄をヒアリングしていたため、スムーズな情報提供を実現できました。
R.F:
融資総額の残り30%の資金手当てをどのようにするかに頭を悩ませました。そこで、親会社向けに親子ローンの原資となる融資を行い、その資金をタイ現地法人に転貸するスキームを提案。しかし、貸付金利を低く設定しすぎると移転価格税制に抵触するリスクがあったのです。提携税理士の協力を得てお客さまの懸念点を一つひとつ解消しながら、適切な金利水準と条件を検証し、安心いただけるよう配慮しました。
T.I:
そしてついに、JBICから融資実行の連絡が入りました。メンバー一同大歓声が巻き起こり、飛び上がりたいほど嬉しかったですね。
― このプロジェクトを通じて成長できたことはありますか?
T.I:
日ごろからコミュニケーションを密に取り、他にない関係性を築いていた当行が選ばれる自信がありました。事実、ライバル行の支店長がタイに出向いて直接提案したものの、日々関係性を積み上げてきた当行の提案が採用されました。融資に限らず幅広い支援活動を行い信頼を得ることが、難易度の高いプロジェクトにおいても重要になると改めて実感できました。
R.F:
当時は入社4年目で営業の経験も浅い中、海外に絡む融資を担当できたのは大きな成長につながりました。最初は国をまたぐ案件であることに不安を覚えていましたが、着実に業務をこなしていくうちに、やるべきことは日本と変わらないと感じられるように。海外案件にも前向きに挑戦できるようになりました。

実現したことによる成果や反響
この挑戦が、海外支援の幅を広げる契機になった。
― プロジェクトの成果や反響を教えてください。
T.I:
当プロジェクトの実績とノウハウを元に、JBICとタイのカシコン銀行の協調スキームを実施したのは、当行としての大きな成果につながりましたね。JBICが海外の現地銀行と連携する事例は、前代未聞。「日本の発展に寄与できる融資なのだ」と熱く説得した結果、これまでに構築した信頼関係もあり、融資を実現できました。当プロジェクトは、当行の海外支援の幅が広がる転機であったと思います。
R.F:
プロジェクト後、アライアンス関係にある千葉銀行と連携した海外支援スキームを構築しました。また、地銀広域連携「TSUBASAアライアンス」の枠組みを活用し、シンガポールドル建て融資も実現。これは、当行と千葉銀行が銀行保証を担当し、シンガポール支店を有する伊予銀行がお客さまに融資するというスキームでした。当プロジェクトをベースにアレンジを効かせた融資を実行できたことによって、当行の海外サポートに対する信頼感向上につながったと感じています。また、現地通貨建てでの資金調達という選択肢を提示できるようになったことで、お客さまのビジネス展開の幅を広げる一助になれたと思います。

今後の展望
柔軟に寄り添う。そして、真のソリューションを届けていく。
― 今後の展望をお聞かせください。
T.I:
お客さまの支援は国内、海外といった場所や通貨によって変わるものではありません。既存のスキームでは難しいのであれば、新しいスキームを構築すればいいのです。現在は市場国際部にて有価証券のディーラーを担当しているため、直接お客さまを支援する立場ではありませんが、銀行員として当プロジェクトで培ったマインドは大切にしています。これからも既存の概念や手段にとらわれず、お客さまが本当に求めるソリューションを柔軟に提案できるよう、切磋琢磨を続けたいと思います。
R.F:
私は当プロジェクトの後、T.Iさんに代わってタイに出向し、現地でお取引先の支援に携わりました。帰国後は市場国際部の海外進出支援室に所属し、海外進出支援や海外融資などを担当。現在は同部の市場営業グループで店頭デリバティブ業務に携わっています。元々海外志向が強かったのですが、当プロジェクトやその後の案件を経験したことで、地方銀行でも数多くの海外案件を担当できるのだと実感しました。そして、海外進出を検討するお客さまに対し、丁寧に事業や計画をヒアリングして、どのような支援がベストであるかしっかり考えてソリューションを提案できるようになりました。海外ビジネス支援を通じてお客さまの成長を支えることで、お客さまとともに当行自身も成長していく好循環を生み出していきたいと思います。



