
融資とは異なる資金供給の手段として、武蔵野銀行が実施するエクイティ支援。その中の一つに、「むさしの地域創生推進ファンド」があります。地域活性化に取り組む企業や株式上場を目指す企業への支援から、 スタートアップ企業への投資を通じて新産業創出を応援していくことで、地域経済・社会の持続的成長への貢献を目指すこのファンドの、2号が2024年にスタートしました。1号との違いや、ファンドを通じて実現したい未来について担当者に伺いました。
プロジェクトの背景・課題・目的
新たな支援の形として誕生した、むさしの地域創生推進ファンド。
― 「むさしの地域創生推進ファンド」が始まったきっかけを教えてください。
「むさしの地域創生推進ファンド」の1号が始まったのは2015年。「まち・ひと・しごと創生法」の施行などもあり、地方創生がキーワードになった時代でもありました。そうした中で、融資とは異なる資金供給の手段を持つことで、お客さまの資金調達手段の幅を増やし、課題解決や成長資金としてご利用いただきたいとの思いから、「むさしの地域創生推進ファンド」は始まりました。
― ファンドならではのメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?
成長スピードの速さですね。企業には成長ステージがあり、シード、アーリー、ミドル、レイターという段階に分かれます。「むさしの地域創生推進ファンド2号」の投資対象は主にアーリー以降のステージにある企業です。その中には、事業そのものは立ち上がっているものの成長のための資金は足りていない、という企業も少なくありません。企業が融資で資金調達をした場合、利益から返済をしなければならず、成長投資がしにくくなり、成長が鈍化してしまいます。しかしファンドのようなエクイティ支援の場合、返済が不要になるため、全力で事業成長に取り組むことができるようになり、より効率よく成長することができるのです。
― 新たに始まった2号ファンドは、1号とは異なるものなのですか?
2015年から始まった1号ファンドは、元々ファンドの期間を10年としていたため、2024年に期限を迎える予定でした。そのため、2025年からは2号を運営する必要があったのですが、2014年と2025年では時代も社会も大きく異なるものです。中小企業やスタートアップが本当に必要とする制度であるためには、現在の時流にマッチするよう、新たに設計をしなおさなければなりません。そのため、過去の記録を紐解き、ファンド設立当初の思いを改めて見つめ直しながら、2号と名の付くものではありつつも全く新しい制度として再度挑戦することにしたのです。

実現ストーリー
お客さまと行員、その両方から選ばれる制度設計を。
― 2号ファンドの制度設計において、どのような苦労や取り組みがあったのでしょうか?
ファンドは、一度立ち上げてしまうと10年間は、その内容を変更することはできません。だからこそ、念入りに制度設計しましたね。他行の状況調査や外部のベンチャーキャピタルとの面談を数多く行いました。現代のスタンダードな運用方法やファンドの制度についての調査も重ねる中で、1号ファンドでは対応できていなかった点が次々と明るみになったので、再設計にはかなり苦労しました。結果的に企画から立ち上げまで約1年という期間を要しました。
― ファンドならではの課題というのもあったのでしょうか?
行内の理解を高めることがハードルになりました。銀行の「融資」は、実行した段階で返済期間や返済スケジュールがほぼ決まります。しかしファンドによる「出資」は、そうはいきません。株式で出資したあと、事業成長を経て上場を目指すのか、シナジーのある他社にM&Aされるのか、自社株として買い戻されるのか、といった”出口”の形が複数あり、投資時点ではまだ決まっていないことも多いのです。ファンドの場合、出資時の株価と売却時の株価の差が利益になるため、出資先の企業に成長してもらうことが不可欠です。、また、株主としての権利も持つことになるため、企業の成長に対する責任も大きくなります。つまり「融資先を探す」ビジネスモデルとは、設計思想が根本的に異なるのですが、この点を行内に丁寧に伝えていくことが課題でした。

実現したことによる成果や反響
ファンドがあるからこそ生まれた、新しい出会い。
― プロジェクトの成果や反響を教えてください。
ファンドの期限は10年ですから、最終的な成果はまだこれからですが、先代の1号ファンドを大きく上回る勢いで推移しています。当初は5億円での設立でしたが、順調な運用ができていることから、2025年10月には10億円に増額しました。お客さまからのお問い合わせも増えましたし、営業店から新しい提案内容として活用したいという声も多く集まっています。
― 中でも印象的な支援実績はありますか?
EV充電インフラ事業を展開するT社への投資は、印象に残っていますね。浜松町支店の若手行員が新規取引開拓活動をする中での出会いだったのですが、融資ではなく投資を希望されており、ファンドがあったからこそ支援を実現することができました。ファンドの理解度を深めてもらうために行内での研修や情報発信に力を入れて取り組んでいましたので、若手行員がそこでの学びを業務で活用してくれたことが嬉しかったですね。他にも、畝を感知する農業用の自走ロボットを作る会社や、こんにゃくを用いて模擬臓器を作る会社など、これまでの支援内容だけでは叶えられなかった企業との出会いを実現することができています。

今後の展望
地域には豊かさを、行内には働く醍醐味を。
― プロジェクトの今後の展望をお聞かせください。
プロジェクトはまだ始まったばかりですから、今後もファンドを活用した資金供給を行い、地元企業やスタートアップ企業の成長育成を後押ししていきたいと思っています。「地域創生推進ファンド」の名の通り、投資先は埼玉との関わりがあるところとしていますから、企業が成長することによって埼玉やそこに暮らす人々の生活がより豊かなものになっていってくれると嬉しいですね。また、スタートアップ企業と接することが多いということもあり、AIやDXなど、最新のテクノロジーを用いて世界に羽ばたこうとしているところも多くあります。そうした企業への資金供給を通じて、産業の育成や経済循環の一翼を担うという金融機関としての醍醐味を、若手行員にも経験していただきたいです。そしてゆくゆくは、さらに大きなファンドの立ち上げや、ハンズオンのような経営を直接サポートしていくような支援など、企業の成長をより大きく促せるような取り組みをしていきたいと考えています。



